声を聞くたび、好きになる
「何かあったら、すぐに言えよ?真っ先に駆けつけるから」
親の離婚が成立して父がこの家を出ていった日、流星はそう言い、私の頭をなでてくれた。星の綺麗な夜だった。
いつも優しいけど、この時の流星は普段以上に優しくそれと同時に悲しそうな顔をしていて、何だか不思議な気持ちになった。流星の家族はみんな仲がいいから、離婚という言葉を私の何倍も重く受け止めていたのかもしれない。
「ありがとう。心配してくれて。私は大丈夫だよ」
ウチのことで流星に暗い思いをさせたくなくて、私は言った。
「私、元々お父さんやお母さんと関わりなかったから、こうなっても他人事みたいに感じるっていうか、そんなに悲しくないんだよね。会話らしい会話もしたことなかったし」
流星は何かに気付いたようにハッとした顔をした後、片手で目頭を押さえる。
「だからお前、昔から人との関わりを避けてたのか……。気付けなくてごめんな」
「…………」
この頃まで人を苦手に思う自分に無自覚だった私は、流星の言葉で初めて、自分の性格を理解した。
「大丈夫。別に困ってないし、イラスト描いてアニメを見ることさえできたら私は幸せだから」
そして、流星がこうやって話し相手になってくれたなら、私は何も望まないから。