声を聞くたび、好きになる

 そんな心持ちでいられたのも18歳までだった。人は、学生でもなく社会人でもなくアルバイターでもない若者をニートと呼んで軽蔑する。

 そのことで気落ちした私に、かつて流星はこう言ってくれた。

「無理することない。ミユらしく元気に過ごせるのなら、今の暮らしを大切にしろ。ニート万歳じゃん」

 声優として着実にステップアップしていく流星。それなのに、私のことをバカにしたりせず励ましてくれた。流星の言葉があったから、私はこうして楽な気持ちで生きてこられた。

 それなのに、流星は、今の私を否定した――。ものすごくショックだった。大の理解者だった彼の否定的な言葉は、どんな毒舌よりも破壊力がある。


 どうしたら、人とうまく付き合えるんだろう?

 どうしたら、充実した暮らしをしてる友達を妬まずに済むんだろう?

 どうしたら、流星にふさわしい女になれるんだろう?


 外見を良く見せることばかり意識してきたけど、恋を実らせるためにはそれだけじゃなく、もっと深い何かが必要なのかもしれない。それって、何だろう?
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