声を聞くたび、好きになる
3 流星以外の異性

 流星と関わらなくなったということ以外、何も変わらない私の日常。

 流星のことを考えないようにしつつ無意識のうちに思い出し考えてしまう。そんなことを繰り返しながら、私はただただ真っ白な気持ちで今という時間を過ごしていた。

 すると、いつも使っているオークションサイトから一件のメールが届いた。着信音の無機質さが、今の心情に合わさって聞こえますます心が空っぽになる感じがした。

 オークションサイトには、入札者や私の商品に入札したい人が事前に質問をできる機能があって、ユーザーから私の出品商品に対しての質問を書き込まれると、リアルタイムでパソコンやスマホにメール通知が届くシステムになっている。

 オークションサイトからのメール通知を開いて、流星と別れる前から出品していたイラストが数枚あったことを私はようやく思い出した。

 落札後のやり取りに関わるから、質問にはなるべく早めに返信しなくてはならない。そんな気分になれないと考えつつ、他ユーザーとごちゃごちゃするのも面倒だなと思ったので、私は仕方なくオークションサイトのメールを開いた。値下げ交渉じゃありませんようにと願いながら。たまにいるんだ。「落札価格より安くイラストを買い取りたいから値下げしてほしい」と頼んでくる人が。


《はじめまして。以前からあなたのイラストを拝見していました。今出品されている竜の擬人化イラストを気に入ったので、即決していただけないでしょうか?十万円、先振り込みにてお支払いいたします。》

 初めて関わるユーザーから届いたメールは値切り交渉とは真逆の、即決を願うものだった。

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