声を聞くたび、好きになる

 分かりました。今回の件はなかったことにします。――そんな返事が来ると思っていたのに、次に芹澤さんから届いたメールは目を疑うような内容で、しかもそれは、引きこもりライフまっただ中の私にとっては好都合なものだった。

《戸塚ミユ様。

急な話に困惑されたことでしょう。本当に申し訳ありません。

高校卒業以来お勤めをされておらず人間関係が不得意とのことですが、今回私からお願いしたイラストレーターの作業は在宅でのお仕事となっておりますので、出社していただく必要はなく、自宅でお好きな時間に作業していただくことになります。

もし専属契約を結んでいただいた場合、打ち合わせのために本社へ来ていただくことがあるかもしれませんが、戸塚様は地方在住なので極力電話やメールで打ち合わせを行えるよう、私が責任を持って調整いたします。

なぜ、ここまで戸塚さんのスカウトに熱心なのか。それを、一度お電話にてお話しさせていただいてもよろしいでしょうか?

本日は22時まで対応可能です。お時間のある時にメールをいただけたら、オークションサイトで拝見した番号にお電話いたします。

どうか、前向きに考えていただけたらと思います。

芹澤海音》
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