声を聞くたび、好きになる

 「えっ!電話!?」

 どうしてこの人はここまで私のイラストに食いついてくるの!?ドッキリを越えて、もはや嫌がらせの域に達してる。詐欺だとしたらしつこすぎ。

 唯一の話し相手だった流星がいない今、芹澤さんがよこしたメールの内容に私はパニックするしかなかった。

 ニート歴約2年。他人とどうやってしゃべったらいいのか分からない!

 これは罰なんだ。オークションでイラストを三万円で落札してくれそうだった人がいたのにその人をアッサリ切り捨て十万円の交渉に乗ってしまった私が悪かったんだ~!神様許して下さいっ!



 私は、芹澤さんに電話しなくて済む方法を考えた。

 オークションに出品したイラストの取り引きは最後までやらなくてはならないから、メールを見なかったことにして無視する、というやり方はできない。

 どうして、芹澤さんはここまで私に……?


 モンモンと考えていると、スマホの着信音が鳴った。珍しく電話である。

 もしかして芹澤さん!?

 画面を見ると、《各務モモ》の文字。モモか……。

 流星に日記を見られた時の気まずさをついさっきのことのように思い出し、電話に出るのをためらった。

 でも、ここまで私と仲良くしてくれた友達を相手に無視を決め込むのも気分が良くない。モモのブログも、全然見に行ってなかったし……。

「はい……」

 私は、思いきってモモの電話に出た。

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