声を聞くたび、好きになる

『元気にしてる?最近ミユからブログのコメントつかないから寂しくてさ』
「ごめん、ちょっと色々あって……」

 高校の時から変わっていないモモの声を聞いて、私はモモに対して抱いていた劣等感をスッと忘れた。

 私はただ、モモがいなくて寂しかっただけ。たった一人の友達だから。

 モモが他のことに夢中になっているのを目(ま)の当たりにして、自分を忘れられたように感じて寂しくて。そんな感情が変な方に曲がり嫉妬心になってしまったんだ。

「私も寂しかったよ。でも、モモの元気そうな声聞けてちょっと安心した」
『ミユ、何かあったの?声、元気ないよ?』

 さすが長年の友達だと思った。こっちのことは隠して明るくしゃべっているつもりだったのに、モモは私の心の中を見透かしているみたいだった。

『流星さんと、何かあった??』

 モモは、私が流星に片想いしてることを知っている。話そうか……。話したら、楽になれるかな?

 迷い、結局私は流星のことをモモに話さなかった。話したら、流星との別れが永遠に取り消せないものになってしまいそうだから。

「何もないよ。仕事の影響で、流星と会えなくて寂しいだけっ」
『そっかぁ。流星さんって、今期のアニメけっこう出てるから忙しそうだもんね。早く、振り向いてもらえるといいね』
「うん、そうだね……」

 流星に好きと言われたことを思い出し、胸がキュッと痛くなる。

 あれは、私にとって都合のいい夢だったんだ。そう思うことにして、極力思い出さないようにしよう。

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