声を聞くたび、好きになる
『あのさ、ミユ』
「ん……?」
モモの口調が、心なしか引き締まった気がした。それでいて、どこかウキウキしてもいる。
『高校最後の文化祭で、ミユと一緒に漫画作ったこと覚えてる?』
「もちろんだよっ、今でも大切にとってあるよ」
高校の頃、文化部にいた私とモモは、文化祭の出品物として共同製作漫画を作った。私がイラストを描き、モモがストーリーとキャラのセリフを考えてくれた物だ。
『久しぶりに一人で見てたら懐かしくなって、夢中で読んでたら学校行く時間になっちゃったからそのまま学校に漫画を持ってったんだ。そしたら、たまたま学校に遊びに来てた芹澤さんっていう先輩がそれを読んでた私の所にやってきて、漫画のイラストをすごく気に入って……!』
「えっ!?」
『ごめん!どうしてもって言われて、その人にミユのこと色々話しちゃったんだ……』
「話したって、何を?」
『今、オークションでイラストを売りながら暮らしてるってこととか……。なんかね、芹澤さん、ミユのイラストの特徴を前から知ってるみたいだったんだよね。そんな時にたまたま私の持ってた共同製作漫画を見て、ますますミユに興味を持ったみたい。でも、アドレスとかはさすがに教えなかったよ。訊かれたけど……』
芹澤さんって、もしかして……。
私はモモに尋ねた。
「その人って、もしかして芹澤海音さん??芹澤さんは今日、オークションサイトで私のイラスト高値即決してくれたんだ……」
『そう!芹澤海音さんだよ!今、紙川出版の編集をしてるんだって?若くして多くの作家の才能を伸ばした敏腕編集だって、先生達が誇らしげに話してたよ。そっか、もう絡んでたんだね』
「メールだけの関わりだけどね……」
出版社の内情はよく分からないけど、芹澤さんがただの編集者じゃないことは薄々分かっていた。少なくとも、一般人の私をスカウトできる権限を持つくらい立場のある人だってことは……。
『私がミユのこと教える前から、芹澤さんはミユのイラストに興味を持ってた。でも、なんかそれだけじゃない気がするんだよね』
独自の視点で芹澤さんのことを分析するモモ。