声を聞くたび、好きになる
久しぶりに人と対面したせいか、お腹いっぱい夜ご飯を食べても眠くならなかった。妙に頭が冴えている。
芹澤さん、見た目のエリート感がものすごく強くて最初は緊張したけど、話しやすい人で本当に良かった……。編集者さんは、物腰の柔らかい人が多いのかな…?
お風呂から出ると、芹澤さんからメールがきていた。
《戸塚ミユ様へ
お疲れ様です。こちらは先ほど本社に着きました。
今日はお会いできて嬉しかったです。これからもよろしくお願いいたします。
芹澤海音》
《こちらこそよろしくお願いいたします。お疲れ様でした。》
わざわざメールくれるなんて、芹澤さん、マメだな。それとも、それが社会人としての常識?
お風呂から出ても睡魔がこない。ベッドに入ったところで眠れないかもしれない。
部屋の電気を消し、窓から夜空を見た。真ん丸の月の光が綺麗に映える。
流星、元気にしているかな?仕事のことや人間関係で悩んでないかな?……サヨナラした日から半月が経とうとしている。長いようで、短い時間だった。
考えているうちに、床で眠ってしまったらしい。翌日、昼前のまぶしい太陽の光で目が覚めた。
何気なくスマホを見るとモモからメールが来ている。
《あれから芹澤さんとはどうなった?
話聞きたいし、夜、会わない!?》
久しぶりに誘われた。モモに会うの、いつぶりだっけ……。
色々報告するにしても、電話やメールより会って話す方が早い。いいよ!と返し、私は瞼をこすった。
寝て起きても、芹澤さんと話した時の高揚感はほんのり胸に残っていた。
夜、専門学校帰りのモモと駅前で待ち合わせた。
約束の時間より三十分も早く着いてしまったので、駅構内にある書店で時間をつぶすことにした。
最近遠ざかっていたのに、無意識のうちに私はアニメ情報誌を手にしてしまっていた。立ち読みできるようになっていたから、なんて、言い訳?
自分の行動にためらいつつページを繰る。
「えっ!?」
静かな店内。思わず声を上げてしまったせいで、回りのお客さんの視線が痛かった。
偶然にも、流星の出演してたアニメの特集ページを開いてしまったのだけど、そこには、花崎華さんと流星のツーショット写真が大きく取り上げられ、同時に、こんな文字が並んでいたのである。
《花崎華×小野流星。役作りの秘訣はプライベートでの恋愛関係!?》