声を聞くたび、好きになる
ここ数ヵ月ほとんど休みなんてなかったから、こうしてふっとやることが無くなるとどうしたらいいのか分からなくなる。
海音は、休みじゃないのかな?
無理無理!仕事が忙しいに決まってる。今回の休暇に海音を誘うのを諦め、力なくスマホを置く。
そうだ。久しぶりにアニメをチェックしてみよう!
テレビの前にどかっと座り込み、以前と同じようにリモコン操作で番組表を表示させる。
適当に気になったタイトルのアニメを録画予約し、今すぐ見られそうなものだけリアルタイムで観ることにした。
アニメの曲が流れ、本編映像が流れる。以前と同じだ。……同じなのに、違った。
前は、完全に視聴者側の気分で観ていたアニメ。それが今は、製作者側の立場から観ていた。無意識のうちに……。
有名になった。評価された。そういう外的な要因じゃなく、私は今、自分の変化を内面的に強く感じていた。
……今の私を見たら、流星は何て言うだろう?
久しぶりに見たアニメに刺激され、私は反射的に流星の声を目の前のアニメから探そうとしていた。
最近、声優さん情報には鈍感になっている。
それから2、3時間、できる限りの数アニメを視聴し、耳を澄ませてキャラクター達の声を聞いていた。
……流星が、いない。
あれ?どうして?もしかして、聞き逃した?
そんな……。たった数ヵ月離れていただけで、流星の声を忘れたりする?
録画されたアニメの、エンディングロールをもう一度見直した。小野流星の名前を探すために。
ない。
小野流星の、名前が……。何で?
あんなに有名だったのに、どうしてどこにもないの!?有名どころのアニメには必ず出ている人なのに!
私はすぐ、流星の名前をパソコンで検索した。流星に、何かあったのかもしれない……!
嫌な予感は、たいてい当たってしまう。
《小野流星。仕事キャンセル連発。不調か!?》
ネットのエンタメニュース欄には、まるで流星の失敗を喜ぶかのように皮肉たっぷりの記事が溢れていた。
「……流星!!」
流星との間にあったゴタゴタは、今は忘れよう。とにかく、心配せずにはいられない。