I still look for you.


頭ひとつ分高いヒロを見上げる。


昔のようにギラギラと輝く金髪ではないが、黒く艶やかな髪は同じ輝きを放っている。

きついつり目も、赤黒くはないが強さは変わらない。


一見すればイケメンエリート若社長な彼も、あたしのようにハメを外していたなんて誰が思うか。

まあ、実体は頭いいのに馬鹿なお人好しなんだけど。


「なんでメガネ取るの。」


「んー?
ルナの目が見たくてさ。
てかメガネの下は裸眼でいいのか?
バレる危険性上がるだろ。」


その言葉ににいっと口角を上げる。


「あたしがたかだか全国No.2の族にメガネを取られるとでも?」


あたしの言葉にヒロは肩を竦めた。


「まさか。
俺でさえ、気を緩めてくれなきゃ取れないんだぜ?
あいつらなんか擦りもしねぇよ。」


ヒロの言葉に満足気に頷いた。

あたしがあいつらにメガネを取られる、よもや正体がバレるなんて万が一にもあり得ない。

あるとすれば自分でバラすときだろう。


「…絶対に、無茶するときは言えよ。」


「珍しいね。
無茶するな、じゃないんだ。」


正直にそう言えば困ったように笑って、ナチュラルにあたしを抱き寄せた。


「言ってきくなら何度でも言う。
けど、今のお前は…。」


「聞かないって言いたいんでしょ。
さすが幼馴染み、よくわかってる‼︎」


そう調子よく言えば、ヒロは少し悲しさを溶かした声で『…ああ、そうだな。』と呟いた。

背中に回るヒロの手に力がこもった。

怯えているようなそれに、あたしも同じように手を回す。


しばらくの抱擁のあと、ヒロが名残惜しげに手を外した。


「さあ、そろそろ時間だ。
誰にもお前のことは言っていない。
ルナの要望通り、この学校内では俺たちは赤の他人だ。
だが、少しでもお前の危険を察知したら手を出さざるを得ないからな。」


「わかってる。
その言葉、もう何回も聞いたしね。」


< 5 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop