あと、11分
シキはそういって、笑っていた。
まるで───〝俺と一緒にいた〟ことがあったみたいな口調で。
でも、俺にはその記憶がない。この2日間以外に、彼女と話した記憶も、見た記憶も、何もない。でも、どこかで逢ったような気がして、彼女とどこかで話していた気がして。
どこかで逢っている?
どこで。
分からない。
いつ。
シキはこの前、と言っていた。この前残ってたもんね、と。
この前残っていた……?そんなこと、あった?
だめだ、思い出せない。
本館に戻る渡り廊下に差し掛かると、ざわざわとざわめく声が聞こえてくる。きっとお昼の時間も削って文化祭の準備をし始めているんだろう。
昨日は雨ばかりで看板制作とか遅れているだろうし。居残りしてるやつもいるだろう、青春してるな羨ましくないけど。
「……あ、れ」
足が、止まる。
……居残り?
あれ、あれ、……あれ?