あと、11分
無理にでも笑ってしまいたかった。
冗談だろ、そんなのって。誰か自分を笑ってほしかった。
そうしてくれたら、これが本当じゃないって思える気がしたから。
記憶が、ないんじゃない。
俺が───、
俺が、〝覚えていない〟としたら?
シキを記憶から、〝消している〟としたら……?
シキという存在が、〝消えている〟としたら。
「……ば、っかじゃねえの……っ、」
嘘だ。
そんなの、単なる思い付きで、小学生がノートの片隅に書いたような空想で、嘘に違いない。