あと、11分
───スイが、逢いに来てくれた。
そう、思ったはずだ。
雨の中、冷たい滴を浴びながら、俺のことを、ずっと待っていてくれて。
待ち合わせの時間すら過ぎて、もうきっと来ないって分かってても、分かりたくなくて、ずっと一人で、泣きながら待っていて。
シキは、きっと泣き虫だけれど……声を荒らげてなく方法も、知らなくて、声を押さえながらずっとずっと泣いて。
偶然通りかかっただけの、俺を見て、彼女はたくさん涙を零していた。
泣き虫な彼女が、たった一人で、ずっと俺が来るのを待っていたんだとしたら。
スイが、忘れないでいてくれた。わたしのことを忘れないで、逢いに来てくれた。
そう、彼女は思ったんだ。
だから、腕を伸ばして、俺が目の前にいることを、本当にいるんだってことを確認しようとして。