あと、11分
きっとシキは、思っただろう。
また、裏切られたって。
また、忘れられてしまったって。
……学校には、誰も頼れる人はいない。家族にだってきっとこんなこと言えないだろう。
たった一人で。
あんな細くて、今にも壊れてしまいそうな彼女が、たった一人で自分のことを消してしまう俺を、待っていた。
薄々、来ないことなんて分かっていた。でも、それでも、信じたくて。信じていたくて。
彼女は、待ち続けた。俺が、来るのを。
「何でっ……なんで、俺は……!」
震える肩。
濡れる瞳。
頼りなく結ぶ口元。
目を閉じるたび、あの時の光景が鮮明に浮かび上がる。