あと、11分



恐怖、だと思う。

それを見て、その反応を見て、俺の心が恐怖で塗りつぶされていく。


「っっ、さっきまで話してただろ!!」


彼女の肩を乱暴に掴んで、何度も何度も、揺らしながら俺は訴えかけた。

必死に言う俺の行動に、戸惑いの表情を浮かべた夕雨が、何が何だかわからないとでも言うようにどうしたの?と聞いてくる。


「さっきまで、シキの話を、して……!!

 それで、お前がっ、お前が……!!」


「落ち着いて、スイ」


「なあ、冗談だろそれ……、冗談だよな、なあ、それ、冗談なんだろ。本当は、違うんだろ、なあ、答えてよ……夕雨」


視界が、滲んだ。

今までの全部が、全部、ピースがはまる音がして。それでも、俺は抗いたかった。

そうじゃないんだって。そんなのありえないって。


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