あと、11分
世界は、シキを殺していく。
「シ……は、シキは……っ!」
いる、と言おうと口を開こうとした、その時。
「───ス、イ……、もう、いいん……だよ」
いつからだろう。
いつから、いやどこまで、見ていたのだろう。聞いていたのだろう。
視線の先に、シキが立っていた。周りの背景なんて、ぼやけて見えないのに、シキの姿だけがやけにくっきり見える。
シキは、笑っていた。必死に口元を和らげようと、無理やりに、笑っていた。
けれど、堪え切れない涙は、彼女の白い頬へと流れていく。