あと、11分
あと、7分
***
にわかには、信じがたいことだった。
この世界に、彼女がいないことが。
……いや、本当は薄々気が付いていたのかもしれない。
〝彼女の記憶だけ〟が抜け落ちている。病気かもしれない。俺が何かの病気にかかっていて、もしくは何か事故があって記憶を、無くしてしまった。
そんな、都合のいいことだって考えた。
でも、それはおかしい。
だって俺の周りで、そんなことを言うやつは一人だっていないから。
もし俺が大きな事故に遭ったとして、それをほかの奴らが知らないのは、おかしい。
いつものように朝起きて、ご飯を食べて、歯を磨いて、隣の家の幼馴染から嫌味を言われながら登校して。
そんな変わりない日常が送れるなんて、おかしい。
───なら。
なら、消去法で残るのは、一つだけだった。