あと、11分
「ひとつずつ、説明していこうと思う」
シキは、そう言いながら長らく使われていない机をすうっとなぞる。
あの時の、空き教室。
俺はシキに移動しようといわれて、言われるがまま、何も考えることすらできないで、彼女の後ろを付いていった。
こひゅっと乾いた喉が、音を鳴らす。
足がうまく動かなくて、俺はドアの一歩前に踏み出すことは、出来なかった。
「……わたしが、死んだこと」
シキが、死んだこと。
ここに、いない、こと。
「わたしは、9年前に、死んだ───でも、」
シキが、悲しそうにくすりと笑った。
その笑みを見るたびに、俺の胸はナイフに切り裂かれでもしたように鋭い痛みが襲って、張り裂けそうになる。