あと、11分
「自分が、死んでしまったって気づいたのには、そう……時間はかからなかった。
階段を下りて、それからたくさんの生徒が廊下を歩いてて、話していて、楽しそうで。
一人に、ね。……話しかけたの。すいません、いいですかって。
……その人は、まるでわたしが〝いない〟みたいに、通り過ぎて行った。
何かの、冗談なんだって。これは、きっと誰かに仕組まれて、誰かに、何かされて、きっとみんながおかしいんだって、そう思いたくて。
通り過ぎる人、みんなに話しかけたの。引き留めて、……引き留めようとして、その手はすってすり抜けて……触ることも、できなくて。
わたしは、ここにいるって。
……でも、……でもね、誰も気づいては、くれなかった。
───だって、わたしはここに、〝いない〟んだから……」