あと、11分



ここにいる。

わたしには、ここにいる。

誰か、誰か、誰でもいいから、気づいて。


9年前、シキがたった一人世界に取り残されて、泣いている姿が目に浮かんだ。

9年、俺に出会うまでの9年間、彼女はどう過ごしたのだろう。


9年なんて長い間、途方もなく長い間、彼女はたった一人で。何も知らない自分を空っぽの自分を抱えたまま。




「……そんなの、理不尽すぎるだろ、なんだよ、それ」

シキは、その言葉にスイは優しいねと言う。優しくなんてなかった。俺だって、彼女に、彼女との記憶をなくしてしまったことに、気づかずにいたんだから。




「最初はね、気づいてもらいたくて、話しかけていたんだ。


 ……でも、もう、駄目だった。


 駄目だったよ」


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