あと、11分
話しかける。
そのまま通り過ぎていく。
話しかける。
すり抜けていく。
そんなことを、何度も繰り返して、何度も何度も繰り返した。
それで、平気でいられる?……いられるわけ、ない。
9年なんて、短いかもしれない。
でもシキにとっては、永遠よりも長い苦痛でしか、なかった。
頼れる人も、信じる人も、慰めてくれる人も、誰もいない。誰も、気づいてくれない。
そんな残酷な、痛みしかない世界。
それが、彼女の世界だった。