あと、11分
「ぁ、あ」
声が、聞こえる。
耳元で、何度も漏れる声は次第に大きくなっていく。それに比例するように俺を抱きしめる力も強くなっていった。
「……あぁ、う、っく。……ぅうううう、ぅううううう……っ」
ダムが崩壊してしまったみたいに、シキは泣きじゃくった。
俺は、彼女の震える体を抱きしめながら、目を閉じる。
「ほ、んとうは……っ、あの時、スイが名前を呼んでくれたとき……嬉しかったんだ……っ。
シキって、シキって呼んでくれてっ、それで……っ。
もしかしたら、って、スイは覚えていてくれたんだって……!わたしのことを忘れないでいてくれたんだって。
ごめんなさい、ごめんなさい……っ。
諦められなくて、諦めようとしてもっ、どうしても、スイを信じてしまって……っ傷つけるって分かってるのに、ごめんなさい、ごめんさい」