あと、11分
「スイペンキ買って来るなんて、気の利いたことしてたんだ。驚き」
「……白ペンキなんて買ってきてないし、誰か勝手に書いたとかじゃない」
思い出そうと、記憶を辿る。……だめだ、なんだっけ、これ。
「ま、いいや」
凪はそういうと鼻息交じりに白チョークを手に持って、俺のすぐ下、不自然に空いた空白に『シーツ取ってきます。凪』と書いていた。
「───」
凪が書き終えると、チョークを置いて教室を出て行ってしまう。俺もすぐ後を追いかけなくては。……だけど、気になってもう一度凪が埋めた不自然な空白の場所を見る。
何故か、一瞬だけ胸が痛んだ。
まるで、思い出のかけらが胸に突き刺さるように。