あと、11分


特別棟には人はあまりいなかった。

2階の渡り廊下から、特別棟へ渡ると足音は俺たちのもののみで、それ以外に人影はない。確かに午後は授業の予定はないし、道具を持ってくる以外に用はないだろう。

1、2階は部活の連中が準備をしているところもあるけれど、3階は文化祭でも使われない階だからますます人影はなかった。


「不気味だなぁ」

「……そう?」


俺は適当に受け流しながら、周りを見渡した。

廊下は全体的に黒ずんでいるようで、確かに少し気味が悪い気もする。


凪は俺の顔を見て得意げに、

「なんせ、この階で〝あった〟らしいって話だしな」

「……あった?」


聞き返すと、俺と歩いている前の方向を指した。

「ほら、この階にさ屋上につながる階段、あるだろ」

「……んん、ああ」

思い返してみると、そうかもしれない。

授業をさぼるときに特別棟によくお世話になるけれど、そう言えば教室と教室を挟んだところに階段があった気がする。


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