あと、11分
「あれが起きた場所が、特別棟の三階から屋上に続く階段じゃないかって、噂があるってさ」
「ふぅ、ん」
俺は視線だけもう一度前にやる───あれ?
一瞬だけ、視界に黒い影が霞めた気がした。瞬きをして、もう一度階段がある場所を見てみるけれど、そこに人影はなかった。
「ええっと、どれ?」
「あーその棚に乗ってる、それそれ」
ぐらぐら安定しない脚立の上で、下から指示してくる凪の声を頼りに俺は埃っぽい棚の上を覗き込んだ。
長らく使われていない準備室(物置部屋?)は、かなり埃かぶっていて、棚の上に腕を伸ばすたび気持ち悪い感触が手のひらをかすめる。
手の先に、布の感触。
俺は構わずそれを引っ張り上げる。塊となったそれは、一気に棚の上から滑り落ちて、手に力を入れていなかったせいで床にばふっと落ちてしまう。