あと、11分

「あーこれこれ」


落ちた布を拾い上げて凪がそういった。

脚立から降りて、付いたほこりを払っていた、そのとき。


携帯の着信音。

俺は今持っていないから、必然的に凪のものだと分かる。

凪はポケットから携帯を取り出すと、


「あーはい。え、まじか。ごめんいいんちょ、今から行くわ」


ぴっとボタンを押して、ポケットにしまうと凪は困ったように眉を寄せて俺に手を合わせて、


「すまんっ。俺、今から文化祭の打ち合わせあるの忘れてたわーたはは」

「はあ?じゃ、これどうすんだよ」

「悪いけど、一人で教室持っててくり」

「……はあ」



ただでさえ埃っぽいのに、こんなでっかいシーツ一人で持ってかなくちゃいけないのか。

ここでごねたって、時間の無駄だけど。



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