あと、11分

見せしめのように大きくため息をした後、


「いいよ、分かった」

「すまん!後でなんかおごるよ」


そう言って、凪は準備室を後にした。


「……さてと」

俺は腰を曲げて、大きなシーツを両脇に抱えて持ち上げる。うわ、埃くさい。そして、重い。


両手がふさがっているから、何とか指先の感覚を頼りにドアを開けた後、下ろすのが面倒で、手にシーツを持ったままポケットから鍵を取り出して閉める。


そうして、教室に向かおうと足を動かして───止まる。


何気なく、ただ何気なく首だけ動かして、さっき凪が指さした屋上のほうを見る。


何か、気になる。

それは多分野暮なヤジ根性みたいなもの、とは少し違う気がした。


自分の意志とは無関係に、足がそちらのほうを向く。

とん、とん、とん。

一定のリズムで俺の足音が響き渡る。


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