あと、11分
まるで、夜に咲く夕顔のように、けれどどこか棘のあるような冷たい口調で、奴はそういった。
(……うわ、美少年)
男の俺が言うのも変だとは思うが、階段の前で一人ぽつんと立つ、そいつは絵画の一部でも切り張りしたように人間離れした、不思議な雰囲気を持っていた。
儚くて、今すぐにでも壊れそうで───けれど、鋭利な刃物のように鋭くて。
そのアンバランスさが、彼の特徴を際立てているような、そんな感じ。
(……こいつ、誰かに……似てる?)
誰に?
頭の中で誰かを思い浮かべようとするけれど、それはするりと手のひらから抜け落ちていくみたいに、思い出せない。
「こんなとこで何してんの」
「……あ、いや。シーツ取りに」
(お前こそ、こんなとこで何してんだか)