あと、11分
そいつは俺の手に持っていたシーツを見て、興味なさそうにふうんと言うと、視線をもう一度階段の先に向ける。
……あ。
その横顔を見て、思い出す。
そう言えば一年ですごい綺麗な男がいるって、女子が噂をしていたのを。
ええっと、名前は……なんだっけ、女みたいな名前で、えっと、……あーそうだ、香澄。名字は忘れたけれど、確か香澄って名前だったはず。
そこで自分に苦笑。
(本当に、他人に興味ないな、俺)
「お前こそ、こんなとこで何してんだよ」
「……別に、なんでも」
聞かれるのが嫌なのか、露骨に綺麗な顔を歪めてそういう。なら俺に聞くなよ。って言わないのは少しでも俺のほうが大人だと思いたかったから。
「───あんま、近寄らないほうがいいんじゃない」
「……」
無言。
顔を伏せて、無反応だった。