あと、11分
「シキは───その時には、もう、長くない身だった」
「うそ、嘘だっ。そんなの、絶対、違う、違う、違う……」
香澄が目を見開いて、何度も嗚咽を漏らしながら否定する。その言葉は、知らなかったからというよりは知っていたからこそ、否定しているような声音だった。
シキは、そんな弟の姿から視線を逸らすことなく、言った。
「わたしは、言った」
「シキは、言った」
「───お母さんを、よろしくねって」
「………………母さんを、よろしくねって」