あと、11分



「シキは───その時には、もう、長くない身だった」


「うそ、嘘だっ。そんなの、絶対、違う、違う、違う……」


香澄が目を見開いて、何度も嗚咽を漏らしながら否定する。その言葉は、知らなかったからというよりは知っていたからこそ、否定しているような声音だった。


シキは、そんな弟の姿から視線を逸らすことなく、言った。


「わたしは、言った」


「シキは、言った」








「───お母さんを、よろしくねって」


「………………母さんを、よろしくねって」





< 245 / 311 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop