あと、11分



お母さんを、よろしくね。


きっと、そうシキが言った時。今のように、今にも張り裂けそうになる痛みを弟に見せないようにって、必死に作った笑顔で、そういったんだろう。

幼い弟と、母さんを置いて、遠くへ行ってしまう自分の不甲斐なさに、やるせなさに、涙をこらえながら。



「そう言ったら、香澄くんは怒って。それから、プレゼントの小さな箱を私に投げつけて、言った。


 ───お姉ちゃんなんて、死んじゃえ。

 そんなこと言うお姉ちゃんなんて、大嫌いだって」


「シキがそういったら、お前は怒った。そして、プレゼントの箱をシキに投げつけて、言った。


 ───お姉ちゃんなんて、死んじゃえ。

 そんなこと言うお姉ちゃんなんて、大嫌いだって、お前は言った」


どんな、気持ちだったのだろう。

香澄は、毎日お見舞いに行くほど、元気のないシキを励まそうと気を利かせるほど、大好きだった姉から。

お母さんを頼むねって、言われて。

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