あと、11分
もう自分は、守れないから。
2人を守ることができないから、せめて、香澄は男の子だから、お母さんを守ってあげて。
「香澄くんは、その日から、一度もお見舞いに来てはくれなかった」
「お前はその日を境に、シキに逢いに行かなくなった」
香澄は、その言葉を聞いてするりと、襟首を握りしめていた拳をほどいて数歩、後ろに下がって両手で顔を覆い隠しながら、泣いていた。
シキは、彼の近くまでやってくると、すり抜けてしまうことなんて分かっているのに。
通り抜けてしまうことなんて、分かっているのに。
それでも、彼の頬にそっと手を添えて、蚊の鳴くような小さな声で、言った。
「───ごめんね」
「……ごめん」
「ごめんなさい」
「……ごめんなさい」