あと、11分
「わたしは、香澄くんを傷つけてばかりだった」
「シキは、お前を傷つけるばかりだった」
「不甲斐なくて、弱くて、お姉ちゃんらしいことなんて一つもしてあげられなかった」
「……お前に何一つしてやれない、姉だったのに」
「嫌われたって、仕方なかった」
「お前に嫌われても、仕方なかった」
シキだって、したいことがいっぱいあったはずだ。
何気ない日常、何気ない学校生活、友達と喋ったり、勉強を頑張ったり、部活動を練習したり、誰かを好きになったり、そんな何気ない、些細な誰もが普通にしている、日常。
でも、それは、シキには叶わなかった。
シキは、病室から一歩出ることも、出来なかった。
毎日お見舞いに来てくれる弟と、支えられなければいけない母親。
それが、シキのすべてだった。
でも、それも叶わなくなる。いつか、自分が死んでしまったら、それすら叶わなくなる。
だから、弟に、香澄に頼んだ。
たとえ、嫌われると分かっていても。