あと、11分



「ち、がう」


香澄が、顔を上げた。

すぐ、隣にシキがいるのに。それでも、シキを見てやることもできない。


「ちがう、嫌われたって仕方ないのは、俺のほうだ」

「香澄、くん」

「俺が!俺が、姉さんにあんなこと言わなかったら!
 
 姉さんに死ねなんてっ、言わなかったら!姉さんは死ななかった!

 死んだりしなかった!嫌われるのは、俺のほう。恨まれるのは、俺のほう。俺が、全部悪かったんだよぁあああああ!!」


「違う、違うよ、香澄くん」


胸元を握りしめながら、泣き叫ぶ弟の手を取ろうとした。でも、その手はするりと抜け落ちて、掴むことなんてできない。


「姉さんは、俺が殺したんだ。

 俺が、姉さんにあんなこと、言ったから!なのに、馬鹿みたいに拗ねて、いじけて、謝りもせずに逢いに行かなかった。


 だから、姉さんは、俺が、殺したんだ」



ずっと、謝ることができなかった。

馬鹿みたいに、いじけて、言葉が出なくてついには逢いに行くこともできなくなって。───そうして、シキは死んでしまった。


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