あと、11分
「止めて!お願い、香澄くんに酷いこと言わないで!
わたしが、悪いの!わたしが、わたしが!」
シキが、俺の前に立ちふさがった。
まるで、香澄を守るみたいに、両手を広げて立ちふさがった。彼女と同い年になってしまった香澄は、それよりもはるかに幼く見えた。
俺は、ポケットから小さな箱を取り出した。
母親に渡すはずだった、プレゼント。
香澄が投げつけたプレゼントは、シキが持っていた。きっと、香澄がいつか迎えに来てくれたとき、渡そうと家の庭に埋めたんだろう。
シキを無視して、俺はしゃがみ込んだ奴の手に無理やりそれを握りしめさせた。
それを見た香澄は、あ、と小さく声を漏らしてそして、一気に心の何かが壊れてしまったみたいに泣き始める。
「姉さんは、捨ててなかったんだ」
はらりと、いびつに歪んだリボンをほどいて、ぼろぼろになった包装を取って───箱を、開けた。