あと、11分
思わずいつものように呼んでしまった。
でも、何で香澄と夕雨が一緒に?
朝のことを思い出す。もしかしたら、シキのことで何かあったかもしれない。いてもたってもいられず、俺は引き留めようとする凪の手からすり抜けて、シキを探し始めた。
いや、探すまでもなかった。
こんなに人ごみがあるんだから、と周りをかき分けようとしたその時。
「───スイ」
後ろから呼び止める声がした。
俺ははじかれたように振り返る。ふわりと、笑う彼女の笑顔を見て、ほっとした。
「はよ、シキ」
「うん、おはよう」