あと、11分
って言っても、もうお昼過ぎだけどね。とシキがお姉さん口調でそういった。
「シキは、今、暇?」
「……うん」
「じゃあさ、ちょっと回らない?」
シキが、何か躊躇うように俺を見上げる。その顔は、一瞬泣きそうになった気がして。
その顔が、俺をいつも不安にさせる。
いつか、彼女が忽然と消えてしまうんじゃないかって、不安にさせる。
彼女の手を離さないようにと強く握って、
「行こうか」
触れた彼女の手は、とても冷たくて、そして残酷だった。