あと、11分
「スイ」
「……なに?」
「わたしね、すごく、嬉しかった」
「……」
「わたしね、きっと、ここから消えてしまってもこの気持ちを忘れないと思う」
───どういう、意味だ。
彼女が、どういう意図で言っているのか、分からなかった。いや、分かりたくなかった。
額に冷たい汗が流れる。
「スイが、いてくれて」
ばん、また花火が打ちあがる。
夜空に咲いた、夕顔のように。
「スイが、助けてくれて」
シキが、こちらを振り返る。
彼女は、笑っていた。儚く、夜の光に照らされながら、小さく笑っていた。
「───スイに出会えて、よかった」