あと、11分
なんだよ、その、その言葉は。
まるでまるで───。
俺は唇を噛みしめた。時計を見上げる。もう、時間がない。
「シキ、待ってて。すぐ、香澄と来るから」
そう言って、教室のドアを開けて出る瞬間───シキは、頬から透明の滴を零していることに、俺は気づかなかった。
『お掛けになった電話番号は現在、電波の届かない状況にあるか───』
「くそっ」
俺は思わず携帯を叩きつけそうになるのをこらえて、もう一度香澄に電話をかけなおした。……でない。
真っ暗な廊下を一人はしるたび、不気味な音が響き分かってとても不愉快だった。汗で張り付いた前髪を振り払うと、俺はもう一度周りを見渡す。
(なんで、アイツ電話に出ないんだ……!)
これじゃあ、俺がシキを忘れてしまう。
シキを、忘れて、消えて───あ、れ。