あと、11分
「───シキ!」
ばんっと教室のドアを乱暴に開けた。
「シキ、シキ」
彼女の名前を呼びながら、教室に入る。そして、あ、と声が漏れた。
シキが、いない。
教室のどこにも。待っていて、といったのに。シキが、いない。
「シ、キ」
ああくそ。
また、見覚えのある、立ちくらみがした。それはカチ、カチ、っと静寂を包み込む教室で時計の針が進むたび、増していく。
嫌だ。嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。
忘れたくない、シキを、忘れたく、ない。
「……や、だ。シキ……っ」
いやだ、シキ。
シキ、シキ。嫌だ。忘れたくない。シキを、忘れたく、ない。