あと、11分
でも、手を伸ばしても、それは届かない。そんな、夢。
その夢を見ると、俺は決まって───
「スイー」
「ふああ、あ」
「ちょ、どうしたん」
時計を見ると、もう12時30分。
何気なく見た前の席は、いつの間にか凪が腰を下ろしていて、ポッキーを口にくわえたまま呆然と俺を見ている。
「……何?」
「い、やなんかスイ怖い夢でも見たん?」
「は?」
「なんで泣いてんのさ」
手の甲でごしっと吹いた。確かに濡れている。俺は、泣いているらしかった。
「あーなんか、眠くて」
「眠くて大号泣とかお前」