あと、11分
俺はゆっくり、彼女から離れる。
───そして、息を呑んだ。
「こころ、のこり……これが、最後だったの」
シキが、
「やっと、伝えられた」
透けて、透明になっていく。
「ま、だ……!まだ、まだだよ、シキまだ、だめだ」
俺はぐったりとするシキを抱きかかえたまま、非常階段を駆け上る。
もう、あたりは夕焼け色に染まろうとしていた。まだ、まだこんなの、こんなところで、まだ、伝えきれてない。伝えたいことが、たくさんあるのに。