あと、11分
それから、息を呑んで───ああ、と何かを知ってしまったかのように、理解してしまったのように、彼女は伸ばしていた手をゆっくりと下ろして。
「……また、……また……っ、」
途切れ途切れの声から、かすかに聞き取れた。
彼女は、たぶん、こう言った。
───また、だめだった。
唇を強くかみしめて、彼女はあふれ出てくる涙を抑えるように両手で顔を覆って、しゃがみ込む。
「こん、なのって……、どう、して……っぁ、うっく、ううぅううう」
声が、掛けられなかった。
その泣き声に、小さく震わせるその肩が───あんまりにも、痛々しくて。それを見ているだけで、俺は何故か心の中で、ずっとずっとごめん、ごめんなさいって謝っている声がした。
それが、自分なのか、誰なのか、分からなかったけど……ずっと、ずっと言っている声が遠くのほうからした。
彼女のちっぽけな背中を見つめ続ける、心臓をぎゅううううっと鷲掴みされたみたいに、痛くなって。