あと、11分


(何か、言わないと、泣くなって言え言えよ、言えよ俺)


「……え、っく、あ、あ……っ」


(でないと───)


ぎゅっと、拳を握りしめた。






(でないと、シキが───壊れてしまう)



「……ぇ……」


……シキ?

シキって、誰……?


あれ、なんで。


聞き覚えのないはずの、名前なのにその名前を心の中で呼ぶたび涙が零れ落ちそうになる。切ない気持ちが溢れてしまいそうだった。


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