あと、11分
(───追いかけないと、また見失う)
「何で」
(もう、見失いたくない)
「どうして」
(失いたくない)
「だから、何で」
心が追いかけろと訴え続ける。ずっと暴れ続ける心臓の鼓動が、痛いくらいに頭の中で鳴り響いている音がして。
それから、名前も知らないはずの彼女の泣く声が聞こえて。
「───っ」
俺は、知らぬ間に足が動き出していた。
制服が雨に濡れて染みになっていくのも気にしないで、俺はさっき彼女が駆け上がっていった階段を上って、非常階段のドアを開けた。