あと、11分


***


「あれ?スイどしたん、そんな慌てて」

「凪!」


非常階段を上ってすぐに繋がる、本館の三階の廊下で大きなパネルをもって歩いている凪にあった。

俺は慌てて走る足を止めて、


「さっきここに長い黒い髪の人、通り過ぎなかった……っ?」

「え……?いや、気づかなかった」

「分かった!」


お礼を言う余裕もなくなって、俺はそのまままた走り始めた。


「え、おいスイっペンキは?」

「悪いけど、今手が離せない!」

「ちょ、スイ!?また委員長に怒られっぞー!!」


慌てて呼び止める凪の声が聞こえたけれど、無視ししてそのまま走り始めた。

どこ、どこにいる?


階段を下りて、すぐの廊下を見渡す。

二階からは生徒の教室になっていて、どこもかしこも文化祭の準備をするやつで溢れ返っていて、人込みをかき分けて呼び止めるけれど、どこにも彼女が見当たらない。


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