あと、11分


「……くっそ、どこ行ったんだよ」


何で、こんなに俺は必死になってるんだろう。

さっき会ったばかりの知らない奴のために。

そんなことする必要なんて、ないはずなのに。






違う、違う、俺は、きっと彼女を知っているはずなんだ。

きっと、逢って話をしてるはずなんだ。


何か、思い出せそうなのに。

なんで、なんで思い出せないんだよっ。きっと大切なことなんだ。ずっと泣いていた、ひとりでたった一人ぼっちで彼女は、泣いていた。


泣かないで、って言わないといけない。


大丈夫だから、泣かないでって言わないと、きっと壊れてしまう。


彼女は───シキは、きっともう、壊れてしまう。



何か、何か、何か……っ!




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