あと、11分





───『生まれてこなければ、よかった』



「……ぁ、」




───『わたしなんて、……生まれてこなければ、よかった』



頭の中で、自分の知らない声が響く。



───『そうしたら、きっと誰も悲しまなかった。誰も、傷つかなかった』



何とか思い出そうと必死に、探るけれど、断片的な記憶のかけらは思い出せば思い出そうとするだけ、霞んでいく。まるで、思い出すのを拒否するかのように。


───『ここにいて……、いいのかな』



どこか見覚えのある、教室。

窓から暗闇にぽっかりと穴が開いてしまったかのような月明かりが頼りなく誰かを、映し出す。



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