あと、11分



チョークをつかむ指に力がこもる。

それから本当に小さな小さな文字で───書いた。


『スイと行ってきます、シキ』


書き終えると、シキはゆっくりと手を下げて。

それからその文字を見て、小さく微笑んで嬉しそうに微笑んで俺を見上げた。







「ありがとう」





何度目かのシキのありがとう。

それは、夕雨に言われるより、凪に言われるより、家族に言われるより、誰よりも───嬉しかった。



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