あと、11分
シキの頭をぽんぽん叩きながら、
「いいよ。どーせ何でいなかったんだ、怒られるし」
「……だれ、に?」
思い浮かぶのはいつも怒ってばかりの俺の幼馴染。
あ、でもシキは夕雨のこと知らないか。俺は適当に説明しようと、もう一度シキに視線を戻して。
「夕雨っていう───」
俺がそういった瞬間。
シキの瞳が動揺で揺れた。
それは、まるで夕雨のことを知っている、かのような反応で。
「シキ?」
撫でていた手が止まる。
ゆっくりゆっくり力なく自分の手が彼女から離れていく。